自由帖

クラさんの「農」のある暮らし: 2008年12月アーカイブ

クラさんの「農」のある暮らし その9

子どもの頃、柿は秋の味覚の代表格の果物でした。どこの家にも渋柿か甘柿の樹があって、柿もぎ(柿の実を枝から取ること)は、秋の風物詩の一つでした。私にもその思い出があります。最近はほかの果物が豊富になったからでしょうか、柿の実は取られずに残ったまま、冬の寒風にさらされている光景をよく目にします。晴れた冬の日の朝、葉を落とした枝についたままの柿の実が、青空によく映えていました(写真①)

田舎(湯沢)の柿の樹も、渋柿は多くの実をつけたまま冬を越すことが多いのですが、比較的大粒な甘柿の実はせっせと取って干し柿を作るようにしています。手で一個一個皮をむく作業はこれはこれで大変なのですが、家族の協力もあって何とかやり続けています。写真②は11月中旬頃の乾燥させている最中の絵です。だんだん水分が抜けて、表面に白い粉が吹くようになってくると甘みがぐんと増してきます。

ところが、丁度この頃になると、この時を待っていたとばかりにスズメの一群がこれをめがけて飛んできて、チュンチュンとついばみ始めるのです。ほかの実には目もくれずに狙い打ちです。飛びぬけて美味しいからなのでしょうか?

動植物との共生を旨とする私も、全てを鳥のえさに捧げるほど慈悲深くはありません。もうちょっと干しておきたいとは思いつつも、外から室内に引き揚げる決断をせざるを得ません(写真③)

今年もあと残すところ1週間。来年はどんな「農」との出会いがあるのでしょうか。楽しみです。

                

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クラさんの「農」のある暮らし その8

ねぎは実に重宝な野菜です。一年を通して消費される、いわば通年野菜です。鍋物の需要が一番多いのかもしれませんが、麺類、冷やっこ、湯豆腐の薬味、味噌汁の具、すき焼きなど、用途は実に多様です。

「関東は白、関西は緑」と言われるように、関東では主に白い部分を食べる根深ねぎが栽培され、関西では葉の先端部分まで食べられる葉ねぎが栽培されてきました。仙台では岩切の曲がりねぎが有名です。

根深ねぎと言えば、池波正太郎ファンであれば、すぐに『剣客商売』第1作「女武芸者」の「根深汁」を思い起こすでしょう。

 

「台所から根深汁(ねぎの味噌汁)のにおいがただよってきている。このところ朝も夕も、根深汁に大根の漬物だけで食事をしながら、彼は暮らしていた。若者の名を、秋山大治郎という」

 

実に質素な食事なのですが、何か凄くおいしい味噌汁を連想してしまいます。これが筆力と言うものなのでしょうか。

私も毎年欠かさずねぎを植えるようにしています。下仁田ねぎなどの苗を買って育て、冬の間も食べられるように土を掛けて保存します(写真①)。太いねぎはこれで用が足りるのですが、いつも思っていたのは、ちょっと薬味に使える細いねぎがあればいいなあ、と言うことでした。それが見つかったのです。ねぎとタマネギの雑種の「わけぎ」です。ホームセンターで偶然見つけました。球根から芽が出たものを発泡スチロールの箱に植えて育ててみました(写真②)。適当な長さになったら根元からきり取って刻むと、薬味となります(写真③)。早速、納豆に混ぜて食べました。「わけぎ」の良い所は、切り取ったあとまた生えてくること、球根なので掘り返して植え直すことも可能なことのようです。

                 

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クラさんの「農」のある暮らし その7

黄色に染まっていた田舎(湯沢)の公孫樹の葉も、すっかり落ちてしまいました(写真①)。この風景を見ると「ああ、冬が来たんだなぁ」という思いにかられます。隣近所に迷惑を掛けていることを心で詫びつつ、熊手や箒を使い落ち葉をきれいに片付けると、私の湯沢通いも終わりの時期を迎えることになります。湯沢の菜園は雪が消える4月まで冬季の休園状態に入ります。

公孫樹は道路を拡幅するときに、伐採の話しがあったことを生前に父から聞かされたことがあります。それに反対して何とか残そうと強く主張したのが亡き母だったようです。水路を蛇行させて残ることになったのですが、いろいろ大変だったらしいのです。「山川草木悉有仏性」という仏教の教えも何のその、道路など公共施設を作ると言っては、簡単に樹を切る風潮が強い中で、母の主張はかなり勇気のいることだったことでしょう。そうした経緯に思いを馳せると、この樹をきちんと管理し守ってあげねばと、強く思うのです。

今年も沢山の銀杏の実を拾ってきました(写真②)。凄いにおいに辟易しながら、皮をむき種を取り出し、きれいに洗い乾燥させると、おせち料理に彩りを添える美しい銀杏のでき上がりです(写真③)。

                ① 

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クラさんの「農」のある暮らし その6

仙台周辺に暮らすようになって、ゆずやびわの樹が庭で育てられることを知ったことは、ちょっとした驚きでした。18歳まで過ごした秋田(湯沢)では栽培しているのを見た記憶がありません。寒さが影響しているのでしょう。ゆずについては、その4で紹介しましたが、今回はびわを取り上げます。

びわは、長崎、千葉(房総)、鹿児島など温暖な地域でよく栽培されているわけですが、我が家の庭でも冬の寒さをうまく乗り切ると、ちゃんと実をつけてくれるのです。剪定も摘房、摘果もきちんとしませんので、毎年、毎年、継続的に沢山の実をつけるわけではありませんが、隔年ぐらいには黄橙色の実が視覚と味覚を楽しませてくれます。経験則的には冬が比較的暖かい年には、順調に生育してくれるようです。

びわの花がいつ開花するか、ご存知ですか。それが何と今頃(11月~12月)なのです。写真①のように、あまり目立たずにひっそりと咲いています。寒さに抗して咲く様はなんともけなげで、いじらしい気がします。これが厳寒期を無事越えると、3月頃には小さな実となって、6月頃には大きくなり色づいてきます。写真②は2007年7月3日にケータイで撮影したものです。来年の7月頃にはこんな風に育ってくれていると嬉しいのですが‥‥‥。

                ① 

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