自由帖

冬の新彊シルクロードの旅(6)

千仏洞

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シルクロードは、仏教がインドから中国・朝鮮を渡り日本にまで伝わってきた道でもある。このシルクロード沿いに 仏教が栄えたことは、この地に千仏洞と呼ばれる仏教石窟が点在していることからも知れる。

 キジル千仏洞はクチャの町からガタガタ道を通りながら2時間位走ったところにある。中国で最も早く開かれた石窟群で、規模も敦厚・莫高窟に匹敵するという大きさ。川沿いに3、2kmにわたて236もの石窟が開削されているという。そのうち6つを見学したが、仏像は全くなく壁画を中心に見た。壁画も仏画についてはその目の部分を中心に削り取られてある。しかし、色彩はまだ鮮やかに残っているものもあり、破壊される前の美しさを想像することは出来る。

 この破壊は、言うまでもなく、この地がイスラム教国になってから、その根本的な教義である偶像崇拝否定を根拠として行われた。
破壊は、探検家によっても行われた。たとえばドイツの探検家スタインはこの地から多くの壁画を剥がし持ち去った。
さらに、もう一つの破壊があった。文化大革命時の宗教弾圧に基づく破壊である。仏教壁画に粘土を塗りつけ見えないようにしてしまったのである。いずれも、悩ましい問題である。

 クムトラ千仏洞もキジル千仏洞と比較的近い所にある。ここも大きな川の近くにある。ここは、入り口に管理人夫婦の住む番屋があり、そこのおじさんが、見学する石窟の鍵をいちいち開けてくれた。背も腹も大きなおじさんで愛嬌も良かった。もうここで36年間住んでいると行っていた。川沿いには砂ナツメという木が橙色の実を付けていてが、おじさんはその実をもいで「食べろ」と差し出したから食べてみたが、甘っぽくはあたが砂っぽい感じもあり、美味いものではなかった。

トルファンでは、有名な火焔山の横を流れる川沿いの断崖に造られたベゼクリク千仏洞を見た。ここもドイツの調査隊によって多くの壁画が剥がされ持ち去られてしまっていた。