自由帖

パキスタン旅行(7)

悲しき世界遺産

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今回の旅行中、4つの世界遺産を訪れた。
インダス文明の華モヘンジョ・ダロの遺跡群、 ムガル朝期の歴史的建造物群や墳墓群のタッターの文化財、ムガル朝の歴代皇帝が建造したラホール城塞とシャリマール庭園、中央アジアからの遊牧民の侵入を防ぐために造った大城塞ロート・フォート。

特に、その内で私は、ヒマラヤ山系を源流とし国土を縦断してアラビヤ海にまで至るインダス川流域に発生したインダス文明最大に遺跡モヘンジョ・ダロに期待した。
しかし、結果は「やがて悲しきパキスタン」という印象が残った。

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確かにそこは、周囲4キロ四方の広大な遺跡で、同じ大きさの焼きレンガを大量に使って造られた高度に発達した古代都市で、期待どうりに驚きもし感動もした。
そして、全景を見渡す丘に発ち、往時そこに3万人もの人々が生活していたという光景を想像し、感慨にふけることも出来た。

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しかし、その一つ一つを近くで見ると印象は一変する。
多くのレンガは白い粉をまかれたような状態になっていて、その白いものが塩であり、その塩害によって、レンガは劣化してもろくなり遺跡があちこちで崩壊していたのである。
なんともやりきれないといった気分となった。

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モヘンジョ・ダロばかりではない。
タッターの建造物群でも、綺麗なイスラム紋様のタイルが風化によって剥がれていてもほとんどそのままである。
ラホール城塞やシャリマール庭園も、老朽化が激しく世界危機遺産に登録されているとのことである。

現地ガイドも、心から残念がり悲しがっていた。
そして、その一つの理由として、国家予算の72パーセントが軍事関連予算であることを上げていた。
特に、インドとの長い間の緊張関係の中では、為政者の目もなかなか文化財保護のほうまでは向かないし、その経済的余裕もないとのことであった。
悲しき現実、悲しき世界遺産である。