仙台市地下鉄

地下鉄東西線問題のいまとこれから

齋藤 拓生

1 地下鉄東西線問題のいま

 地下鉄東西線は,平成27年12月6日,開業しました。

 仙台市は,開業年度の1日当たりの利用者数を11万9000人と予測していた。ところが,開業後の6か月間の利用者数は,1日平均4万8000人にすぎません。仙台市の需要予測の半分以下の利用者数にとどまっています。

 奥山市長は,平成28年12月22日の定例記者会見で,「検討している」と評価し,交通事業管理者も,「最低限の水準は確保している」と述べています。そして,仙台市は,仙台市民オンブズマンの公開質問に対し,「地下鉄東西線は,市域東西方向における各種都市機能を連結し,地下鉄南北線と一体となって本市の骨格交通軸を形成するものであり,そうした新しいまちづくりを支える極めて重要なインフラであります。多くの市民,事業者の皆様の幅広いご理解,ご協力を得ながら。安定的な事業運営に向けまして,引き続き努力してまいりたいと考えております。」と回答しています。

 しかし,今後,仙台市の人口減少が進むことは確実である。仙台市が当初予測した1日当たりの利用者数を11万9000人が実現することなど到底不可能です。1日当たり穂利用者数が5万人程度で推移すれば,事業収支の赤字が続きます。黒字に転換することはありません。民間企業であれば倒産に至ることは確実です。しかし,仙台市は,一般会計から,莫大な資金を地下鉄東西線事業に投入することにより,すなわち,市民の犠牲において,地下鉄東西線事業を継続しようとしているのです。

 

2 地下鉄東西線と仙台市民オンブズマン

 仙台市民オンブズマンは,地下鉄東西線事業については,計画段階の当初から,仙台市の需要予測は絵空事であり,地下鉄東西線事業の事業収支は赤字必至であり,破綻必至の事業であるとして,計画中止を強く主張しました。

 平成15年,いよいよ後戻りできない段階となり,地下鉄東西線に関する一切の公金支出の差止を求める住民訴訟を提起しました。訴訟における主張の要点は,①開業時の乗車数11万9000人(1日)はもはや絵空事である。せいぜい6万人である(1日),②1日の乗車人数が6万人であれば,黒字転換は永久に不可能であり,一般会計から毎年巨額の税金を注ぎ込まなければ,経営を維持することができない,③仙台市は,費用便益費を1.62(費用1に対して便益が1.62)であるとするが,それは水増しであり,正しくは,0.82でしかない(費用に見合った便益が見込まれない),④以上のとおりの実態の地下鉄東西線事業は,違法であり,そのような違法な事業に公金を支出することは許されない,というものでした。

 仙台地裁は,平成17年12月22日,「1日当たりの乗車数11万9000人という仙台市の需要予測には,合理性が認められる。したがって,これを前提とする損益収支見込み(平成35年度には単年度黒字に,平成46年度には累積黒字になる。)も,著しく合理生を欠くものとはいえない。そうだとすれば,本件事業を実施するか否かは,被告市長がまさに社会的,政策的又は経済的な諸要素を総合考慮して決すべき政治的判断ということができ,議会のコントロールの下での被告市長の広い裁量に委ねられる。」として,仙台市民オンブズマンの請求を退けました。

 事実と証拠を無視した明らかな不当判決でした。直ちに,控訴したが,控訴は退けられ,さらに,上告も退けられ,平成20年3月11日,不当な仙台地方裁判所の判断は確定してしまいました。

  

3 地下鉄東西線問題のこれから

 最初に述べたとおり,開業後の6か月間の利用者数は,1日平均4万8000人にすぎません。仙台市の需要予測の半分以下の利用者数にとどまっています。仙台市民オンブズマンが訴訟で主張したとおりのことが現実化しているのです。平成27年度末の時点で,仙台市の一般会計から,「借入金」という形で,地下鉄東西線事業に103億円が投入されています。地下鉄東西線事業の収支が黒字に転換する可能性はありませので,地下鉄東西線事業の収益から,「借入金」が返済されることはありません。地下鉄東西線事業は,税金を投入し続けなければ存続することはできません。

 地下鉄は,あれば便利です。しかし,仙台市は,平成28年度末で,7903億円という膨大な借金をして,何とか財政を運営しています。極めて苦しい財政状況となっています。一般会計から地下鉄東西線事業に投入されたお金は,平成27年度が約30億円,平成28年度が約25億円ですが,本来は,とてもそのような余裕はない状態なのです。莫大な住宅ローンを抱えて,返済に苦しんで家庭が高級外車を購入するのと同じです。高級外車に乗れば快適かもしれませんが,身の丈あった生活をするべきなのです。苦しい財政状況の仙台市において,地下鉄東西線は,どうしても必要なものだったのでしょうか。

 本来は,議会で,もっと議論が尽くされるべきでした。しかし,地下鉄東西線の必要性,事業収支,仙台市の財政に及ぼす影響等々について,議会ではまったくといっていいほど議論は行われていません。そのような議員を選んだ市民にも責任の一端はあるのではないでしょうか。

 議会が機能しない場合は,裁判所の出番です。裁判所は,仙台市民オンブズマンの主張に耳を傾け,事実と証拠に基づいた判断を行い,東西線事業への公金支出を差し止めるべきでした。裁判所は,原発訴訟において,安全神話を追認したのと同じように,「行政はまちがったことしない」という先入観から,裁判所は,その職責を放棄してしまったのです。

 議会も裁判所を機能しなかった以上,今後は,市民自らの手で,地下鉄東西線についての誤った政策判断に陥った原因を解明し,責任の所在を明らかにし,仙台市民の損失を少しでも小さくする手立てを考えるほかなりません。市民の皆さんにも,地下鉄東西線事業の今後に注目していただきたいと思います。


以上

【震災後】地下鉄東西線の事業廃止を申し入れました

 ご報告が遅くなりましたが,5月18日,仙台市長に対して地下鉄東西線の事業廃止を申し入れました。
 詳細は申入書(→地下鉄東西線廃止の申し入れ書110518_.pdf)のとおりです。
今まで,仙台市は東西線の需要予測のやり直しをかたくなに拒んでいました。震災によって,東西線の乗客見込みはより厳しい状況に追い込まれてしまいました。市バスを荒井駅に結節させて仙台市東部の住人を地下鉄の乗客にしようという目論見ははずれそうです。
 少なくとも,震災後を見越して需要予測をやり直し,その内容を市民に公表し,それでも地下鉄東西線を建設するのかどうか,市民の意見を聞くべきでしょう。
 震災で多額の予算が必要になるにもかかわらず,地下鉄東西線というハコモノが本当に必要なのか,作ってしまって赤字を垂れ流すことを容認できるのか,慎重に見極めるべきでしょう。
                                           そごう

地下鉄東西線建設中止要請文を送付しました

10月9日に内閣総理大臣・国土交通大臣・内閣府特命担当大臣(行政刷新)に対して、地下鉄東西線の建設中止の要請文を送付したのに続き、10月17日付で下記大臣、副大臣、政務官に対して、議員会館の個人事務所宛てに、要請文を送付いたしました。
内閣府特命担当大臣(行政刷新) 仙谷 由人 
大臣政務官 泉健太  
国土交通大臣 前原 誠司 
国土交通副大臣 辻元 清美 馬淵 澄夫 
国土交通大臣政務官 長安 豊  三日月 大造  藤本 祐司  
財務大臣 藤井 裕久  
財務副大臣 野田 佳彦 峰崎 直樹  
財務大臣政務官 大串 博志 古本 伸一郎
総務大臣 原口一博  
総務副大臣 渡辺 周  内藤 正光 
総務大臣政務官 小川 淳也  階 猛  長谷川 憲正 
  要請文の要旨は以下の二点です。詳細は、要請文をご覧ください。
1 仙台市営・地下鉄東西線建設を直ちに中止する措置をとってください。
2 国は仙台市に対し、第4回パーソントリップ調査結果を前提に仙台市が事業許可申請した条件で需要予測を再計算するよう指示してください。
                                かわむら

要請文の詳細はこちら→要請書(内閣府宛)091017.doc

地下鉄南北線上告不受理決定

 

残念ながら、標記の事件は最高裁で上告が受理されることなく、3月26日オンブズマンの敗訴が確定しました。

この事件は、地方公営企業法17条の2及び17条の3の条文の文言をどう解釈するのかという
法令解釈が争点です。最高裁としてきちんとした法解釈を示すべきでした。


同法施行令8条の5は、

「性質上当該地方公営企業の経営に伴う収入をもって充てることが適当でない経費」
「性質上能率的な経営を行ってもなおその経営に伴う収入のみをもって充てることが客観的に困難であると認められる経費」
として、補助金を出せる経費を列挙しています。
地下鉄事業について補助金を出すことは、施行令では認められていないのです。

にもかかわらず、全国の地下鉄事業は、収入をもって経費をまかなうことが客観的に困難であるということで補助金を受けています。このような法令に違反する状態をそのまま許すことが法治国家として許されるのか否かが、本件の焦点でした。

しかし、最高裁は、法治国家の最後の守り手であるという職責を放棄して、「法治国家」を「放置国家」にしてしまったのです。
                                         松澤

仙台市地下鉄南北線補助金問題(論点)

補助金問題で高裁判決

平成20年10月31日仙台高裁で地下鉄南北線に対する一般会計からの補助金が地方公営企業法17条の3に違反しているか否かの判決がありました。裁判所は、違反するものではないと判断しました。「恒常的に」補助金を出すことが「特別の理由」があるとして許されるのであれば、法律が定めた地方公営企業の「独立採算性」は絵に描いた餅になってしまいます。判決はいろいろ長々と「理由」を述べますが、長々になるのは、論理をごまかしているからに他なりません。

南北線の赤字と補助金額

地下鉄東西線が建設中ですが、東西線は予測の半分しか乗車人員がいないので運賃収入が建設費の回収はおろか人件費・運行経費というランニングコストすら賄えないのではないかと危惧されています。本当にそうなったなら、東西線建設を強行した仙台市長や関係職員・市会議員の責任は重大で、きちんと責任を果たしてもらわなければならないのですが、

南北線も、乗車人員の過大予測(予測30万人に対して実情16万人)によって、赤字が平成19年度末で約1100億円に達しました。実はこのほかに740億円ほど赤字穴埋めのために補助金が注ぎ込まれているので、実際の赤字は1840億円となります。</u>裁判となっている平成17年、18年の補助金は合計25億円ほどでしたが、平成19年度は約20億円となりました。平成20年度は約25億円、平成21年度以降は30億円を超える補助金を出すことが予定されていて、今後も市民の税金が地下鉄事業のために使われていきます。

地方公営企業の独立採算原則と補助金

地方公営企業は、独立採算で企業運営をしなければなりません(独立採算が無理なら企業化せずに一般の都市施設として運営することになります)。但し、政令(地方公営企業法施行令)で定められた特定の経費については一般会計からの補助を受けることができます。政令で定められたもの以外は、地方公営企業法17条の3で定めている「災害の復旧その他特別の理由により必要がある場合」にのみ補助金を受けることができることになっています。

政令は、概略「性質上地方公営企業の収入で賄うのが適当でない経費」「性質上地方公営企業の収入でまかなうことが客観的に困難な経費」について、補助ができる経費を特定して定めています。

判決は、政令の定めは「通常考えられる経費」として一般会計が負担すべき経費を特定しているので、「臨時例外的経費・個別具体的経費」については「特別の理由」によるものとして補助ができるという判断をしました。

補助される補助金のほとんどは、地下鉄建設のために発行した債券(借入金)の償還のための経費です。地下鉄の建設に多額の費用がかかることは最初からわかっていることで、「臨時例外的経費・個別具体的経費」とは言えません。建設費のための借入金の返済に補助が必要ならば、最初から政令は補助を認めているはずです。しかし、そうなってはいません。

鉄道事業法5条により経営上健全であることが鉄道事業の許可に際しては必要です。鉄道事業許可を受けるときは、独立採算で運営ができなければ「経営上健全」と言えません。従って、地下鉄は補助金なしで運営ができる建前になっているので、地下鉄建設費の償還費用を、政令は補助対象に記載できるはずもないのです。

判決の評価と今後

判決は、地下鉄事業が補助金なしに成り立たないという現状を追認して、法律の解釈を捻じ曲げたとしか言いようがありません。憲法9条のような高度の政治問題でもない地下鉄事業の問題で、法律をきちんと適用せず言い逃れのような解釈を行うことでは、法律やそれを司どる司法の尊厳は、ともども画弊に帰してしまうでしょう。納得できかねる判決で、上告し最高裁の判断を求めます。なお、赤字必至の地下鉄事業の推進こそが本当の問題です。一時的に不足した収入を穴埋めするためだけであるなら一般会計から一時借入すればよいことで、経営状態が良くなれば返せば済むのです。返す必要がない「補助金」を出すと言うことは、地下鉄事業が黒字にならないという何よりの証拠です。東西線ができたらば大幅赤字は必至で、仙台市の財政負担は増大します。政治責任は結果責任といいますが、誰が責任をとるのでしょうか。今後も機会を捉えて、東西線建設を中止させなければならないと思います。

地下鉄南北線訴訟(概要)

仙台市の地下鉄南北線に関する訴訟をご存知でしょうか。
東西線がランニングコストさえ出てこない赤字路線になることは、オンブズマンのみならず心ある行政関係者には明らかな未来像なのですが、現在走行している地下鉄南北線(泉中央-富沢)も、設備投資のための借金の返済ができるだけの収入が得られないため、毎年市税から補助金を出している現状なのです。法律は、地方自治体が企業経営をするというのであれば、住民の税金で企業経営の失敗を穴埋めすることがないよう、地方公営企業について市税からの補助金の支出を原則的に禁じています。ところが、南北線ではこれまで毎年のように補助金を出しており、その金額は約700億円に達しているのです。南北線の訴訟は、このように法律違反を繰り返ている行政実務に対し、法律どおりの行政を行うことを求め、平成17年度と18年度に支出した約25億円の市税の返還を求めたのです。

 仙台地裁と仙台高裁(平成20年10月31日)は,いずれもこれを違法ではないと判断し,オンブズマンの請求を却けました。行政が法律に違反する行為をすることを裁判所がきちんと阻止できておらず、裁判所の真価が問われる大問題です。

高裁判決はこちらです。 高裁判決081031.pdf

 オンブズマンはこれを不服として上告しております。