【報告】北東ネット 市民フォーラム in 盛岡

平成23年12月10日午後1時から、「震災・エネルギー問題と地方自治」と題して、北海道・市民オンブズマン・ネットワークの市民フォーラムが岩手県盛岡市で開催されました。当日は50名近くの方にご参加いただき、大盛況のまま終了いたしました。簡単ではありますが、内容をご報告いたします。

 

1 講演

まず、岩手大学農学部の伊藤幸男先生から、「木質バイオマスエネルギーによる地域活性化の可能性と課題」と題して、再生可能エネルギーとして、生物資源の利用方法と今後の市場的な可能性、生物資源を現実に社会に活かすうえでの政策提言をお話しいただきました。  木質バイオマスエネルギーの利用には、熱利用を中心として進めていく必要があること、公正で納得がいく市場を作りつつ地域分散型のエネルギーシステムを構築していくことが大切であるとのことでした。

 

 

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 次に、岩手県葛巻町農林環境エネルギー課の日向信二さんから「エネルギー自給の街づくり」と題して、葛巻町で実践されているバイオマスの利活用政策についてお話いただきました。森林が86%を占める葛巻町では、風力発電導入プロジェクト、太陽光発電、木質バイオマス等、自然と人間の共生を目指した様々なプロジェクトを実施してきました。自然のクリーンエネルギーを一次産業の付加価値とすることによって、周辺地域からの関心を呼び、地域の活性化にも寄与しています。葛巻町は、人口7000人余りの小さな町ですが、大都市でも実践していないようなエネルギー政策を行っていることは、大きな驚きでした。

 

  葛巻町.jpg 

2 ディスカッション

(1)各地の報告

  ディスカッション.jpg 原発関連施設立地地域から、原発問題に対して主体的に活動いただいている方々からお話しいただきました。

 北海道の渡辺達生先生から、「泊原発の廃炉をめざす会」の活動について報告がありました。泊原発の廃炉を目指し、泊原発付近のプレートの存在に基づく大地震の危険や、原発以外のエネルギーでも十分に電力需要を賄える点を、現在提訴している原発差し止めの裁判で主張しているとのことでした。

 青森県弘前大学の大坪正一先生から、原発問題に対する青森県での活動について報告がありました。大坪先生は、「だまっちゃいられん津軽の会」のメンバーとして活動されております。平成23年5月に実施したアンケートでは、原発事故により原子力開発の考えが変わったという人が全体の8割以上いたにもかかわらず、回答者のうち半数以上の方が核燃料事業に対していまだに期待を持っているとのことでした。原発事故にもかかわらず、まだまだ青森県では原発の危険性に対する認識が十分ではないようです。「だまっちゃいられん津軽の会」では、今後も原発依存の問題点を指摘する運動を続けていく気持ちを強くしたとのことです。

 宮城県からは、仙台市民オンブズマンの十河弘弁護士から東日本大震災に対する女川原発の影響と先日立ち上がった脱原発ひまわりネットの第1回学習会についてご報告いただきました。学習会では、只野靖先生をお呼びし、「脱原発裁判」の今後の進め方をお話しいただいたとのことです。

 新潟県の齋藤裕先生から、柏崎刈屋原発に対する原発差止めの取り組み等について報告いただきました。柏崎刈屋原発の差止め訴訟に向けて、今後は周辺地域との連携を深める中で、原発による経済的損失の大きさを明らかに行くことも視野に入れているそうです。

(2)討論

 各地の報告をもとに、原子力エネルギー政策を継続する意味と、原発依存経済からの脱却、再生可能エネルギーの可能性について議論されました。

 報告者以外からも積極的に発言がなされる等、白熱した議論が行われ、今後のエネルギー政策を考える上で、大いに参考になるものでした。

 

3 感想

 今回の市民フォーラムでは、改めて原発廃止へ国民全体での運動の必要性を強くするとともに、改めて自然エネルギーへの移行の必要性と重要性を実感しました。特に葛巻町のように地域一体となった再生可能エネルギーの取り組みをより多くの人に知っていただき、全国のモデルとなって各地に広まる必要があると感じました。

 

以上