外務省関連

開示遅延国家賠償請求平成19年: 2008年11月アーカイブ

(期日の感想とご報告)外務省国家賠償請求控訴事件

11月19日行われた外務省国賠控訴事件の感想とご報告です。

○ 事件名
  仙台高等裁判所平成20年(行コ)第22号不作為の違法確認等請求

    控訴事件

 

<感想>

外務省側は,「情報開示の決定が遅れたとしてもオンブズマンには損害がない」などと述べてきました。この「損害論」については第1審でもさんざん議論していたところです。にもかかわらず蒸し返してきたというのが私の率直な感想です。「決定が遅れたことに正当な理由があるかどうか」の議論に入りたくないために,また蒸し返してきたとしか考えられませんね。

一般市民の方からすると不思議に思われるかも知れませんが,オンブズマンは一定の規約を持った組織(これを「権利能力なき社団」といいます)ですから,裁判の原告にはなれるわけですが,一般に個人以外には精神的損害=慰謝料はないと考えられているのです。外務省側は,この点を衝いてきたのですね。でも,私たちとしては,オンブズマンへの情報開示決定が遅れたことによって,行政の不正をチェックするというオンブズマン本来の行動が妨げられ,それによって無形の損害を被ったと思っています。そして,これを金銭に評価して賠償を求めることはできると考えているのです。

外務省には,正々堂々,「決定が遅れたことに正当な理由があるかどうか」の議論に入ってもらいたいところです。

                        
<内容>

 ○ 控訴人(オンブズマン側)
   ・ 平成20年11月12日付文書提出命令申立書陳述
   ・ 平成20年11月13日付証人の採否等に関する意見書陳述(外務省職員の証人尋問を求めるもの)

 ○ 被控訴人(外務省側)
   ・ 平成20年11月14日付準備書面(1)陳述
   ・ 平成20年11月14日付意見書陳述(証人尋問に反対するもの)

 ○ 裁判所
   ・ ①損害の有無及び②遅延の違法性について検討の必要あり
   ・ 被控訴人は,真実を明らかにするために上記文書提出命令申立に協力できるかどうか検討してほしい

 ○ 宿題
   ・ 控訴人:被控訴人による「権利侵害無し」との主張に対する反論
   ・ 被控訴人:上記文書提出命令申立に対する意見

 ○ 今後の期日(次々回期日以降は予定)
   ・ 平成21年1月23日午後2時~(弁論)
     (予定されていた平成20年12月26日の期日は取消されました)
  (以下予定)
   ・ 平成21年2月9日午後1時15分~午後4時(証拠調べ)
   ・ 平成21年2月27日午後2時~(証拠調べ)

外務省に対する国家賠償請求訴訟(概要)

 

外務省に対する不作為の違法確認及び国家賠償請求訴訟(概要)
                                   

平成18年11月30日及び平成19年2月2日、仙台市民オンブズマンは外務省に対し、サンフランシスコ日本国総領事館等の関係文書の情報開示を求めました。これに対して外務省は開示請求文書中可能な部分に対しては平成19年1月29日及び4月3日までに開示決定等をする。その余の部分については何と開示請求日から約2年後の平成21年3月4日までに開示決定等をすると回答してきました。
言うまでもないことでありますが、情報はまさに生ものであり、本来開示請求をしたときに開示されなければ意味のないものであります。ましてや、2年後の開示など論外であり、このような形での開示が正当なものとして認められるならば、事実上情報公開制度は否定されたも同然であります。
 そこで、仙台市民オンブズマンは、外務省に対し、平成19年5月23日、不作為の違法確認訴訟等を提起しました。本件における請求の趣旨の主な骨子は①外務大臣が開示請求に対し開示決定等を一切しないことが違法である。②外務大臣が開示請求に対し60日を超えても「相当部分」につき開示決定等をしないことが違法である。③外務大臣が行った「通知」という処分を取り消す④事務処理上の違法につき損害賠償を請求するといったものです。
 その後、訴訟の進展にともない、外務省が開示決定等を行い、対象文書の一部を開示してきました(やればできるのです!)。そこで、オンブズマンは①から③の請求は取り下げ、④のみの請求を立てました。

 ところが,不当にも,仙台地裁は平成20年7月15日,オンブズマンの請求を棄却しました。その理由は,国家賠償が認められるのは「受忍限度を超えるような遅延があった場合だけである」などとしています。「外務省は他に忙しい重要な案件を担当しているのだから,オンブズマンは情報公開遅れくらいはがまんしなさい」と言わんばかりの判決です。きわめて行政寄りの判断ですし,その判断手法も大変不公正でした(詳細はこちらのコメントをご覧下さい。)。 地裁判決comment08.7.15.pdf

 オンブズマンは現在仙台高裁に控訴しており,情報公開請求手続を5ヶ月間も放置していた担当者3名の証人尋問を求めています。

 次回高裁期日 11月19日(水)午前11時 弁論  証人の採否が決まる予定です。

開示遅延国家賠償請求平成19年: 月別アーカイブ

カテゴリ